Fill the Ocean with a Single Drop『大海を一滴で埋めよ』|第八話『24%』2025年4月8日

第八話『24%』

このドラマは、対馬水産による新規プロジェクトをユーモアとリアリティを交えて描くノンフィクション・シリーズです。

トランプ関税ショック──仲買と海外ディストリビューターに動揺が広がる。

2025年4月8日【LINE電話でのテレビミーティング】

ニューヨークのディストリビューターと豊洲の仲買のLine通話

参加者
NYのディストリビューター:田所
豊洲の仲買(アメリカ担当):西岡

明日4/9からのトランプ相互関税、24%を控えた前日のLINE電話でのテレビミーティングにて。
田所(ニューヨークのディストリビューター)と西岡(豊洲の仲買い、アメリカ担当)との会話。

田所(画面越し、声が沈んでいる)
「西岡さん…明日から、日本からの鮮魚にも24%の関税がかかります。
お客様がもう悲鳴ですよ。何とか『値引きしてくれ』って言われてます。

今回は、とりあえず私が12%を持ちますから、残りの12%、そちらでもお願いできませんか?」

西岡(眉をひそめ、静かに首を横に振る)
「田所さん、それは無理だ。
今、日本株も大暴落して、もしかしたらうちの売上が半分、いや、3分の1になるかもしれない。
そんな状況で、品質を下げずに利益率を下げるなんて…こっちがもたないよ。」

(豊洲市場の朝の忙しい景色)

田所(顔を赤くし、焦りが伝わる)
「でも、こちらのお客様もギリギリなんです!
すべての仕入れが値上がりしていて…卵1パック12ドルですよ?
高級レストランとはいえ、限界があります。」

(ニューヨークの街中)

西岡(手元に視線を落とし、少し悩んでから)
「鮮度を少し妥協するか、もっと安い魚に変えるという選択肢もあるが、
それで良いのか?」

(足元の魚に目が行く)

田所(即座に首を横に振り、強い口調で)
「それだけは絶対にできません!
『安かろう悪かろう』になったら、常連さんはすぐに離れていきます。
私たちが守ってきたのは、鮮度、品質なんです。

多少値段が高くなっても、代替不可能なジャパンクオリティーを維持できれば
きっとお客様はついてきてくれると思うんです。」

西岡(沈黙。目を閉じ、深く考える)
「…でも、品質を守りつつ価格を下げるなんて、
結局、利益を削るしかないよ。」

(少し目を伏せ、思い悩む)

「それに、いつまでこの状況が続くのかもわからないのに。」

田所(声を震わせ、切実に)
「我々は、コロナ禍も何とか協力して、乗り越えてきたじゃないですか…
お願いです、なんとか知恵を絞ってみてくださいよ。」

西岡(沈黙後、ゆっくりと画面を見つめる)
「…わかりました、ちょっと、考えさせてください。」

(電話を切る)

(代替不可能な、ジャパンクオリティーとは言え、やはり限度がある
何とか、クオリティーを下げずにコストカットできる方法はあるのか)

(脳裏に、対馬水産からの営業メールが浮かぶ)
(高い鮮度、高品質冷凍魚、廃棄ロスの削減、人件費の削減ができる商品)

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