リヨンの観光地と食文化の市場調査

対馬水産では、JETRO主催のシーフードショーやホテル・レストランショーなど、海外での展示会出展にあわせて各国の観光地を巡り、その国ならではの食文化と市場の実態を調査しています。

今後、現地での体験をもとに、以下の視点から現地レポート形式でコラムを配信してまいります。

1. Sirha Lyon 2025 出展レポート 〜対馬の魚、フランスへ〜

Sirha Lyon 2025の入口

2025年1月、私たち対馬水産は、フランス・リヨンで開かれた国際食品展示会「Sirha Lyon 2025」に出展しました。Sirhaは世界中のシェフや食品バイヤーが集まる、美食の最先端が集結するイベントです。

会場はまるで『食の博覧会』。伝統料理から最新のフードテックまで、世界中の食文化が一堂に会し、大勢の来場者でにぎわっていました。そんな中、私たちは対馬の自然豊かな海で育った魚を紹介するため、参加いたしました。

出展したのは、ふっくら柔らかい「煮穴子」、チーズやお餅と合わせたフレンチ風の「蒸し穴子の串カツ」、鱗まで香ばしく揚げた「紅甘鯛」の3品。試食を通じて、現地のシェフや来場者からは「初めて食べる味」「フレンチにも合いそう!」という声が続々と届きました。

対馬の魚の魅力は、味はもちろん、その“背景”にもあります。
豊かな海、持続可能な漁法、そして日本人のていねいな加工技術。

そんなストーリーに惹かれる方も多く、食を通じて文化がつながる瞬間を感じられた展示会となりました。

2. 映える街・リヨンで、ちょっと特別な景色に出会う旅

展示会の合間に立ち寄ったリヨンの観光地は、どこも絵になる場所ばかり。

街歩きが好きな人や、ちょっとした非日常を味わいたい人にぴったりのスポットがそろっています。

① フルヴィエールの丘とノートルダム大聖堂 【絶景が好きな人におすすめ!

フルヴィエールの丘

ケーブルカーで簡単に登れる「フルヴィエールの丘」は、リヨンの街を見下ろす絶景ポイントです。

丘の上に立つ「ノートルダム大聖堂」は白くて美しく、外観も中のステンドグラスも必見。

天気のいい日は、遠くアルプスの山まで見えることも。ゆっくり深呼吸したくなるような、静かで気持ちのいい場所です。

② 旧市街とサンジャン大教会 【のんびり街歩きしたい人におすすめ!

サンジャン大教会の内部

石畳が続く旧市街「ヴュー・リヨン」は、カフェや雑貨店が並ぶ歩くだけで楽しいエリア。

中心にある「サンジャン大教会」は、重厚な外観と繊細な彫刻が見ごたえたっぷり。
タイムスリップしたような気分になれます。

ちょっと立ち止まって、道端の花屋や古本屋をのぞいてみるのも楽しいですよ。

3. リヨン最大級の商業施設で魚売場をチェック

リヨンのWestfield La Part-Dieuの魚売り場

リヨン中心部にある「Westfield La Part-Dieu(ウェストフィールド・ラ・パールデュー)」は、衣料品や雑貨、レストランなどがそろう大規模ショッピングモールで、地元の人々の日常に溶け込んだ商業施設です。地下の食品フロアにはスーパーマーケットがあり、魚介売場も併設されています。

訪れた鮮魚コーナーには、サーモン、マグロ、鯛、タラ、ムール貝、エビ、カキなどの魚介類が種類豊富に並んでいました。魚はカット済みや内臓処理済みで販売されているものも多く、フランスの一般家庭向けに使いやすい形で提供されています。

価格表示は100g単位またはkg単位で、部位や処理方法によって異なる価格帯が設定されています。陳列は清潔で見やすく、夕方に向けては買い物客でやや混み合う様子も見られました。

観光市場とは異なり、普段使いの買い物の場として機能しており、現地の暮らしに根ざした魚の消費スタイルを垣間見ることができました。

4. リヨンの日本食材スーパーを現地調査|品ぞろえと価格をチェック

リヨンには、日本の食材を扱う専門スーパーがいくつかあります。今回はその中でも代表的な2店舗、「Satsuki」と「iRASSHAi」を訪問し、店内の雰囲気や品ぞろえ、冷凍魚介類の取り扱い、価格帯などを調査しました

いずれも現地在住の日本人や和食に関心のあるフランス人に利用されており、それぞれ異なる特色があります。スーパーを通じて見えてきた現地の日本食ニーズをご紹介します。

①『iRASSHAi(いらっしゃい)』

リヨンの日本食材店iRASSHAiの店内の様子

リヨン2区にある「iRASSHAi」は、日本食材を専門に扱う小さなスーパーです。店内にはしょうゆやふりかけ、レトルトカレー、即席みそ汁などの定番品に加え、日本酒やスナック類も並んでおり、棚ごとに見やすく整理されています。

冷凍食品はうどんや餃子といった加工品のほか、サバの塩焼き、サーモンの照り焼き、えびフライなどの魚介系惣菜も取り扱いがあり、温めるだけで使える手軽さが特長です。

価格は日本よりやや高めで、しょうゆ(500ml)が約7€、米(2kg)が約13〜15€、サバの塩焼き(2切れ)が約7〜8.50€ほど。日常的に使えるものがそろっていて、家庭で日本の味を再現したい人には便利な品ぞろえです。

②『Satsuki(サツキ)』

リヨンの日本食材店「Satsuki」の店内

リヨン中心部に店舗を構える「Satsuki」は、日本食材を幅広く取りそろえる専門スーパーです。しょうゆやみりん、乾物、レトルト食品などの基本食材はもちろん、米や調味料の種類も豊富で、現地在住の日本人からも長く支持されています。

冷凍コーナーでは、マグロの赤身、サーモン、ホタテ、タコ、エビなどの魚介類がそろっており、加工品だけでなく調理用として使える素材も充実しています。

こちらも価格は日本よりやや高めで、しょうゆ(500ml)が約6〜7€、米(2kg)が約12〜15€、マグロの赤身(冷凍)が約30€/kg前後が目安。業務用の商品や家庭向けの少量パックもあり、さまざまなニーズに対応しています。

商品の種類が多く、店内も整理されていて買い物しやすく、在仏日本人だけでなく、和食に興味のあるフランス人客の姿も見られました。

5. リヨンに根づく“日本の味”──和食店で見る現地ニーズ

展示会を通じて日本の食文化を伝える立場にいるからこそ、現地で日本食がどのように受け入れられているかを実際に見て、感じておきたいと思いました。

リヨン市内には、寿司店やラーメン店を中心に100軒を超える日本食レストランが点在しており、和食はひとつの「食の選択肢」としてすっかり定着しつつあります。ただし、アジア全体を扱う店舗や現地流のアレンジが強い店も多く、本格的な和食を落ち着いて味わえるお店は限られています

今回はその中でも、日本人の視点から見ても納得できる味と雰囲気を持った3店舗を訪れ、リヨンに広がる“日本の味”のリアルを探ってみました。

①YUZUYA(ユズヤ)

リヨンの和食店YUZUYAの唐揚げ

「YUZUYA」は、モダンな雰囲気の中で寿司や唐揚げ、焼き魚、天ぷらなどを気軽に楽しめる和食ダイニング。

アラカルト中心で、料理はどれも丁寧な仕上がり。

盛りつけや器にもこだわりが感じられ、上質さと親しみやすさが共存した一軒です。

②RAMEN DJIZAN(慈山)

リヨンの和食店RAMEN DJIZAN(慈山)のラーメン

「慈山」は、味噌・塩・醤油ラーメンを提供する人気店。

塩ラーメンは魚介と鶏の旨みがきいた透明なスープが特徴で、日本人も納得の味。

地元ではラーメンが“和食”として自然に受け入れられている様子がうかがえます。

③『TOMO

リヨンの和食店「TOMO」の料理。うどん、天ぷら、唐揚げ、穴子重

「TOMO」は、寿司や煮物、天ぷらなどを提供する落ち着いた雰囲気の和食店。

おすすめは「穴子重」。ふっくら煮た穴子と優しい味わいのうどん、天ぷらのセットは見た目も上品で満足感あり。

日本の家庭の味に近い、安心感のある一膳です。

まとめ|リヨンで広がる“日本の食”のこれから

リヨンでの展示会出展や現地調査を通して感じたのは、日本の食文化がフランスで「特別な料理」から「日常の選択肢」へと変わりつつあるということです。

スーパーの魚売場や日本食材専門店、そして人気の和食店に共通していたのは、手に取りやすさ・品質・安心感といった価値が、現地の人々にしっかり伝わっていること。

特に、ていねいに加工された魚介や和食材には、高いニーズがあると実感しました。

今後、産地や加工背景を含めた“ストーリーのある商品”が求められる中で、対馬産の魚介には海外市場でも広がる可能性があると確信しています。