Fill the Ocean with a Single Drop『大海を一滴で埋めよ』|第十六話『波紋』2025年4月30日

第十六話『波紋』
このドラマは、対馬水産による新規プロジェクトをユーモアとリアリティを交えて描くノンフィクション・シリーズです。
海外からの注文を受け、翌日の朝1番、空輸チルド便で海外へ飛ばすには荷受けでの冷凍在庫ストックが絶対条件。
2025年4月30日【Zoom会議:大阪営業本部】

【参加者】
営業所:塚口部長、児島
Zoom:長谷川(東京)
Zoom:田中工場長(長崎県 対馬)
(会議室に静けさが漂う中、塚口部長が口を開く。)
塚口部長
「長谷川くん。豊洲経由のカナダ便、進捗はどうなっている?」
長谷川
『はい。月曜日に無事、仲買に商品が届き、予定通りカナダへ空輸されたとの報告を受けています。』
児島
「で、カナダからの反応は?」
長谷川
『ゴールデンウィークと重なっていて、まだ連絡はついていません。ただ、焦らずに信頼関係を築いていこうと思っています。連休明けには、直接伺う予定です。』
塚口部長
「そうか。今は待つしかないな。……だが、答えはすでに出ているはずだ。」
長谷川
『部長、次の急な注文に備えて、豊洲の荷受けに20ケースほど冷凍在庫を置かせてもらえないかと考えています。』
児島
「まだ注文もないのに、荷受けが在庫リスクを背負うか?ちょっと焦りすぎじゃないか?」
塚口部長
「いや、それは違う。次に同じ機会があっても、対応できなければ信用を失う。もうチャンスは巡ってこないかもしれない。」
(塚口部長、真剣な表情で長谷川を見つめる。)
塚口部長
「長谷川くん、とにかく荷受けと交渉してみてくれ。もしカナダの反応が良ければ、彼らにとっても悪い話ではないはずだ。」
長谷川
『はい。ゴールデンウィーク明けに結果を持って、改めて交渉に行ってきます。』
塚口部長
「田中工場長、在庫の準備をお願いできますか。」
田中工場長
『了解です。漁師にも連絡を入れておきます。今は、比較的いい型が揚がってきているようです。』
塚口部長
「荷受けに在庫が常備され、仲買が1ケース単位でピッキングでき、そこからチルド便で空輸されるようになれば……。
その一滴は、やがて豊洲全体に波紋のように広がるだろう。――長谷川、頼んだぞ。」
長谷川
『はい。必ずリピートにつなげてみせます。』
(緊張の空気が、わずかに和らぐ。)
塚口部長
「ところで、児島くん。万博の売れ行きはどうだ?」
児島(やや表情を曇らせながら)
「……悪い知らせがあります。」