底引き網漁

海底をさらう影─対馬近海で進む底引き網漁の大型化とその背景

対馬近海では近年、大型船による底引き網漁が急速に増加している。
その背後には、漁業構造の変化、国際的な競争、そして補助制度の存在といった複合的な要因がある。

以下に、その主な理由を整理する。

1. 漁船の大型化と操業の近代化

大型漁船

1970年代以降、日本の漁船は60トン級から100トン超の大型船へと進化した。

冷凍設備や自動巻上げ機器、GPS・ソナーなどの導入によって、沖合や深場での長期操業が可能となり、効率を重視する現場では、大型底引き網漁船の導入が加速している。

2. 対馬近海に広がる豊かな漁場

対馬の海

対馬暖流と冷水系の潮流が交差するこの海域は、古くから多様な魚種が集まる好漁場として知られている。

底引き網漁は、広い範囲で多魚種を一括して狙えるため、このような潮目の海では特に有利とされている。

3. 資源変動と操業対象の変化

回遊魚

タラやエビ類などの資源が減少し、近年はスルメイカやサバといった回遊魚が主要な対象となっている。
魚種の不安定さを補うため、魚種を選ばず一網で漁獲できる底引き網漁が現場で支持されている。

4. 韓国・中国など外国漁船との競合

底引き網をしている漁船

対馬海域は東シナ海に面しており、韓国・中国などの大型漁船が操業するエリアと重なっている。

漁場を巡る国際的な競争が激化する中、日本の漁業者も効率的な漁法として、大型底引き網漁へと移行している。

5. 小規模漁業の衰退と経済的圧力

高齢の漁師が、漁をしている

漁業者の高齢化、後継者不足、燃料費の高騰などの影響で、小型船による沿岸漁業は減少している。

そのため、少人数で高収益を目指す漁業者が、大型船に依存する傾向が強まっている。

海底生態系と資源への影響

網に捕まった魚

底引き網漁は、海底の砂泥や藻場を大きくかき回しながら広範囲を一網で漁獲する。

その結果、稚魚や底生生物を巻き込んでしまい、産卵場の破壊や生態系への影響、資源の再生産能力低下などが懸念されている。

長期的には、漁場そのものの持続可能性を失うリスクすらある。

補助制度が支える構造

コストの上昇と下降

こうした問題がありながらも、大型底引き網漁が増加し続けている背景には、経済と制度の両面がある。

国や自治体からは、漁船・漁具の近代化支援、燃料費補助、省力化設備の導入支援などが交付されており、結果として、環境負荷の高い漁法に対する依存が進みやすい構造が生まれている。

結び──海を壊さず、未来につなぐ冷凍という選択

対馬水産は、こうした現実に向き合い、海を壊さない漁法を行う漁師との直接提携を選びました。
底引き網を使わず、資源の豊富な「旬の大漁日」に限定して活魚を買い付け、現場で活けジメ・真空パック・急速冷凍。
鮮度を封じ込めたまま、長期保存が可能な高品質な冷凍魚に仕上げています。

これにより、賞味期限が長く、廃棄ロスの少ない、環境と共生する水産物流通のかたちを実現しています。

私たちは、対馬の海でしかできない方法で、持続可能な漁業の未来をつくり続けます。