ニューヨークの観光地と食文化の市場調査

対馬水産では、JETRO主催のシーフードショーやホテル・レストランショーなど、海外での展示会出展にあわせて各国の観光地を巡り、その国ならではの食文化と市場の実態を調査しています。

今後、現地での体験をもとに、以下の視点から現地レポート形式でコラムを配信してまいります。

1. SUSHI-CON 2024 出展レポート 〜現地の反応と手応え〜

ニューヨークでの市場調査の一環として、私たちは寿司専門の国際展示会「SUSHI-CON 2024」に出展しました。
北米最大級の寿司イベントというだけあり、現地の寿司文化に根ざした食材ニーズや調理スタイル、業界のトレンドを把握する貴重な機会となりました。
本項では、展示会の概要とともに、実際に出展者として得られた反応や気づきをレポートします。

会場全体の雰囲気と来場者の関心

アメリカのニューヨークで開催された、SUSHI-CON 2024の会場の様子

会場はマンハッタン中心部のMetropolitan Pavilion。寿司や和食に関わるサプライヤーや飲食関係者が一堂に集まり、終日多くの来場者で賑わっていました。

マグロの解体ショーや即興の握りパフォーマンス、各社による試食提供など、展示会というより“ライブイベント”に近い雰囲気で、来場者は味わうだけでなく、見て・聞いて・体験するスタイルで各ブースを巡っていました。

注目されたのは、単なる「美味しさ」だけでなく、その食材がどこで、どのように獲られ、加工されているのかといった“背景への関心”の高さです。
とくに「サステナビリティ」や「地域との連携」に関する取り組みには、多くの来場者が質問を寄せており、食材選定の価値観に変化があることがうかがえました。

SUSHI-CON 2024 概要

  • 開催日:2024年9月22日(日)
  • 開催地:Metropolitan Pavilion(ニューヨーク・マンハッタン)
  • 主催者:True World Foods
  • 出展企業数:50社以上(寿司・和食関連サプライヤー)
  • 来場者数:非公開(チケット完売)
  • 主な来場層:寿司職人、和食レストラン経営者、食材バイヤー、メディア関係者

対馬水産ブースに集まった関心と声

SUSHI-CON 2024に出展した対馬水産のブースす様子

対馬水産は、天然の「甘鯛」と「真穴子」を中心に出展しました。

特に注目を集めたのは、甘鯛の松笠揚げ。鱗をあえて残したまま揚げる独特の調理法に、「初めて食べた」「使ってみたい」といった声が多く寄せられ、フレンチや創作和食のシェフを中心に関心を集めました。
試食を求める来場者でブース前にはたびたび行列ができ、想定以上の反響を実感しました。

煮穴子の細切り(ご飯添え)は、骨切り済みで調理の手間がかからず、冷凍品ながらもふっくらとした食感と香りを維持している点が評価されました。「そのまま使える」「ランチに取り入れやすい」といった実用面への反応も多く見られました。

また、対馬の漁師との連携や持続可能な漁法といった背景にも関心が寄せられ、商品の説明をきっかけに広がりのある対話が生まれていました。地域性やストーリーに価値を見出す姿勢も感じられました。

2. 『ニューヨークらしさ』を象徴する、ふたつの景色

展示会出展の合間に、ニューヨークを代表する2つの場所を歩きました。

ひとつは街のエネルギーが渦巻くタイムズスクエア、そしてもうひとつは遠くに姿を見せる自由の女神。

対照的なこの2つの風景は、それぞれ異なるかたちで「ニューヨークらしさ」を体現しているように感じました。

にぎわいの象徴、タイムズスクエアを歩く

ネオンと人の熱気が渦巻くタイムズスクエアでは、街全体がステージのような空間になっていました。
巨大スクリーン、ミュージカルの広告、コスチューム姿のパフォーマー、ストリートフード。どこを切り取っても“絵になる”この場所は、訪れるだけで都市のエネルギーが体に流れ込むような感覚があります。

観光客とローカル、パフォーマンスと商売、記念撮影と流れ去る雑踏。
すべてが混ざり合って回転していく光景は、単なる観光地ではなく、ニューヨークという都市の「現在進行形の勢い」そのものでした。

活気のある街を体感したい方や、SNS映えする写真を撮りたい方には、ぜひ一度歩いてみてほしいエリアです。

遠くに見える、ニューヨークの象徴「自由の女神」

タイムズスクエアのようなにぎやかなエリアとは対照的に、自由の女神は静かにその姿を見せてくれます。今回はマンハッタン南端のバッテリーパークから、遠くにその姿を眺めました。

思っていたよりも小さく見えましたが、やはり「ニューヨークといえばこの景色」という実感があります。近づかなくても雰囲気を味わえるスポットとして、観光の合間に立ち寄るにはちょうどいい場所です。

もっと間近でしっかり見たい人は、フェリーでリバティ島に渡るのがおすすめです。
女神の足元まで行けるだけでなく、台座や内部に入れるチケットもあります。人気のため事前予約が基本なので、訪問を予定している方は早めの計画が安心です。

3. ニューヨークの日本食材スーパー「Sunrise Mart」を現地調査

今回の調査では、ニューヨークに複数店舗を展開する日本食スーパー「Sunrise Mart」を訪れました。店内には、新鮮な刺身や寿司ネタが豊富に並んでおり、現地在住の日本人や日本食ファンからの支持の高さがうかがえます。

売場には、ネギトロ丼($5.95)サーモン、マグロ、イカ、エビなどを盛り合わせた刺身セット($13.95〜$16.95程度)がパック販売されており、いずれも彩りよく丁寧に盛り付けられていました。特にネギトロは、粗挽きと細かめのすり身がミックスされていて、日本のスーパーとほとんど遜色ない品質です。

日本と比較すると価格はやや高めに感じられましたが、現地でこれだけの品質の商品が手に入ることから、一定の需要はあるように思われました。

4. 本格和食店『Sobaya』|ニューヨークの和食事情とは?

ニューヨークで和食がどのように受け入れられているのか──その実態を知るために、マンハッタン・イーストビレッジにある蕎麦専門店「Sobaya(蕎麦屋)」を訪れました。

店内は木の温もりが感じられる落ち着いた空間で、観光客やグルメなニューヨーカーたちでにぎわっていました。

メニューは、手打ちの二八蕎麦を中心に、天ぷら、煮物、焼き魚など、日本の家庭料理に近い品々が並びます。料理はどれも丁寧に盛りつけられており、食材や調理技術へのこだわりが随所に感じられました。

価格帯はランチで20〜30ドル、ディナーでは40ドル以上と割高です。
それでもお客さんが絶えない理由は、素材と技術、そして“本物の和食”を食べられるという信頼感にあると感じました。

まとめ

今回のニューヨーク訪問では、展示会「SUSHI-CON 2024」への出展をはじめ、現地の観光地や日本食文化の受容状況を幅広く調査することができました。展示会では天然魚の品質や持続可能性への取り組みに高い関心が寄せられ、商談への手応えを感じる場面も多くありました。

また、観光地としてのタイムズスクエアのにぎわいや、日本食材スーパー「Sunrise Mart」、本格和食店「Sobaya」の訪問を通じて、ニューヨークという国際都市における日本食の浸透度や消費者ニーズの多様性を実感しました。

これらの現地調査をもとに、今後の海外展開や商品開発のヒントを得ることができ、対馬水産の強みをさらに活かす方向性を見出す貴重な機会となりました。