Fill the Ocean with a Single Drop『大海を一滴で埋めよ』|第十一話『並ばせない博覧会』2025年4月14日

第十一話『並ばせない博覧会』

このドラマは、対馬水産による新規プロジェクトをユーモアとリアリティを交えて描くノンフィクション・シリーズです。

動かぬ営業チーム──塚口部長、自らテレアポを開始。

2025年4月14日【Zoom会議:大阪営業本部・朝の朝礼】

参加者
 営業所:塚口部長、柴沼(ファインスタッフ広報・万博担当)、橋詰(ファインスタッフ SE)
 Zoom:長谷川(東京)
 Zoom:田中工場長(長崎県 対馬)

塚口部長
「おはよう。……児島くんは?」

柴沼
「体調不良で、本日はお休みです。」

長谷川
『またですか……。
ということは、今日も豊洲の仲買への手紙は出せませんね。』

塚口部長
「仲買リストは残ってるのか?」

長谷川
『はい。児島さんのデスクにありました。
20社分、会社名と連絡先が載っています。』

塚口部長
「……もういい。手紙はやめだ。
明日からテレアポに切り替える。水曜は市場が休みだから、木曜・金曜の午前中を狙おう。
長谷川くん、いけるか? 私もかけてみる。」

長谷川
「もちろんです。明日の午前中、動いてみます。」

塚口部長
「田中工場長、新宿の事務所にも無償サンプルを送ってもらえるか?」

田中工場長
「了解。東京・大阪にそれぞれ10セットずつ送る。
東京は2日かかるから、木曜の午前には届く見込みだ。
……ただ、離島だからな。船が止まらなければ、だが。」

長谷川
「ありがとうございます。金曜のアポに間に合えば助かります。」

塚口部長
「さて……柴沼くん、万博の初日はどうだった?」

柴沼
「おかげさまで、入場証は全員分そろって、無事に対応できました。
(※ファインスタッフでは、万博期間中に複数の飲食店への人材派遣と、対馬水産ブースの運営を担当)
4月13日(日)はあいにくの雨でしたが、来場者は11万9,000人。
予約は約14万人だったので、やや減少です。」

塚口部長
「それでも、十分な人出だな。レストランの様子は?」

柴沼
「ほとんどの店が品切れになるほどの盛況でした。
ただ、夕方以降は雨の影響で、人気店とそうでない店の差がはっきりと出ました。
“非日常”を感じさせる店舗――たとえばドイツビールやハラール料理の店は、アイドルタイムでも満席。
一方で、普段から街中で食べられるような料理は、安くても敬遠されがちに見えました。」

塚口部長
「……なるほど。大阪万博、“非日常空間”がキーワードか。」

長谷川
で、うち――対馬水産のブースの様子は?

柴沼
「……正直、かなり厳しいです。
うちのブースはパビリオンの1階。
人気店に列ができると、会場全体が入場規制になってしまい、空いている店にもお客様が流れてこない。
完全に“ふん詰まり”状態です。」

柴沼(続けて)
「しかも、店内外にテーブルが一切なくて、「どこで食べるんだ」という苦情につながる可能性も。
パビリオンの外に共有ベンチはありますが、圧倒的に数が足りません。」

塚口部長
「……どのみち、外で食べることにはなるが、
うちの穴子重が仮にバカ売れしたら、それはそれで他店に迷惑をかけかねん。」

田中工場長
「“売れれば”の話ですけどね!
(※万博仕様で、1万食を作るように言われているが、不安が隠せない)」

長谷川
「それなら、“モバイル整理券”を導入しては?
時間指定で誘導すれば、行列を防げます。」

塚口部長
「うん……だが、整理券を配るだけじゃ、その場でまた並ばせることになる。」

長谷川
「そこを、モバイル予約にすれば――
来店時間をこちらでコントロールできます。」

塚口部長
「橋詰くん、簡単な整理券システム、作れそうか?」

橋詰(少し控えめに)
「今からの開発は間に合いません。でも……
リクルートの「エアウェイト」というサービスなら、使えると思います。」

塚口部長
「よし、それでいこう。すぐに準備を始めてくれ。
ここで結果を出さなきゃ、出店した意味がない。」

長谷川
「皆さん、対馬水産のブースが注目されれば、世界中のバイヤーに繋がります。
万博は、“ただのイベント”じゃありません。これは国際商談会なんです。
この2週間、全力で成功させましょう!」

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