国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストとは?

絶滅のおそれがある種の「健康診断表」

IUCNレッドリスト(The IUCN Red List of Threatened Species)は、地球上の野生動植物が絶滅の危機にどの程度さらされているかを評価し、カテゴリーごとに分類・公表している国際的な指標です。

このリストを作成・管理しているのは、スイス・グランに本部を置くIUCN(国際自然保護連合)
1948年に設立された、世界で最も歴史ある環境保護団体の一つであり、政府機関、NGO、研究機関などあらゆる分野の専門家が参加しています。

1. IUCNレッドリストの目的

IUCNレッドリストは単なる「絶滅危惧種の一覧」ではありません。以下のような多角的な目的を持っています。

レッドリストの目的

① 企業や漁業者、一般市民が自然資源の持続可能な利用について考えるきっかけを提供すること

② 絶滅のリスクにさらされている種を明確に示し、保護の必要性を国際社会に訴えること

③ 科学的な根拠として、各国政府の自然保護政策や資源管理の指針になること

④ 生物多様性の長期的なモニタリング手段として活用されること

2. 絶滅リスクのカテゴリー(主なもの)

IUCNレッドリストでは、絶滅の危険性に応じて以下のようなカテゴリに分類されています。

カテゴリー名略号意味
絶滅(Extinct)EXすでに野生では存在せず、全ての個体が死亡
野生絶滅(Extinct in the Wild)EW野生下では絶滅し、飼育・栽培下でのみ存在
絶滅危惧IA類(Critically Endangered)CR近い将来に絶滅する極めて高いリスク
絶滅危惧IB類(Endangered)EN絶滅の非常に高いリスクがある
絶滅危惧II類(Vulnerable)VU絶滅の高いリスクがある
準絶滅危惧(Near Threatened)NT現時点では危機的でないが、将来的にリスクあり
低リスク(Least Concern)LC絶滅の可能性は低い

これらの評価は、個体数の減少率、分布域の縮小、繁殖状況、脅威要因など、多数の科学的データに基づいて行われます。

3. 日本の水産資源とIUCNレッドリスト

レッドリストには、私たちの食生活に深く関わる商業的に重要な魚種も多数掲載されています。
例としては、以下の魚があげられます。

・ニホンウナギ(Anguilla japonica
 【カテゴリー】EN(絶滅危惧IB類)
 → 長年の過剰漁獲、河川改修による生息環境の悪化、産卵海域の特定困難などが原因。

・クロマグロ(Thunnus thynnus
【カテゴリー】VU(絶滅危惧II類)
 → 世界的に需要が高く、乱獲による個体数減少が深刻。国際的な資源管理が強化されている。

4. なぜレッドリストが重要なのか?

IUCNレッドリストは、自然と人間の暮らしをつなぐ重要な情報源です。
例えば、漁業資源に指定されている種がレッドリストに入っている場合、持続可能な漁獲量や漁期の見直しが求められます。また、消費者が購入する魚種についても「今後も食べ続けられるか」を考える判断材料になります。

レッドリストを通じて、“自然の声”を科学的なデータで可視化し、未来に向けた行動を促す
それが、このリストが世界中で活用されている理由です。

まとめ

UCNレッドリストは、専門家だけでなく私たち一人ひとりが自然と向き合うための指針でもあります。
日々の消費行動や情報の受け取り方を通じて、持続可能な自然資源の利用に目を向けていきましょう。