Fill the Ocean with a Single Drop『大海を一滴で埋めよ』|第三話:「仲買の壁」2025年4月1日

第三話:「仲買の壁」

このドラマは、対馬水産による新規プロジェクトをユーモアとリアリティを交えて描くノンフィクション・シリーズです。

荷受けを後回しにし、豊洲の仲買に直接アプローチする決断を下す。

2025年4月1日【WEB会議:塚口部長、児島、長谷川、田中工場長

参加者
 営業所:塚口、児島
 Zoom:長谷川(東京)
 Zoom:田中工場長(長崎県 対馬)

塚口部長
「せっかく200gオーバーのプレミアム穴子を買ってくれてるお客様がいるのに、在庫がないから出荷できない?どういうことだよ!」

田中工場長
『いや、部長。100〜200gの穴子がこんなに余ってる状況で、新たな仕入れはできませんよ。』

塚口部長
「100〜200gだって、骨が当たらないし、煮穴子にすれば十分売れるはずだ!」

長谷川
『でも部長、うちのは刺身でも出せるレベルの高品質冷凍穴子ですよ?煮穴子にしちゃうのは、もったいなくないですか?』

塚口部長
「そんな事を言ってたら 売上目標を達成できないじゃないか。
ガンガン売って、残ったら、どこかに安く売ればいいじゃないか。」

塚口部長
「わかってるさ。でも、せっかく信頼を築いてリピートもらえてるのに、量販店で欠品を一回でもだしたら
もう2度と注文をもらえないかもしれないだろ。」

児島
「塚口部長、わかりました。

田中工場長、100〜200gの穴子は、我々が新しい販路を開拓して売ってきます。
市場の荷受けや仲買に持っていきますので、仕入れ再開をご検討いただけませんか?」

塚口部長
「そうだ。彼らがやってくれる。今回の欠品は、対馬水産にとって致命傷になりかねないんだ。
やっとの思いで契約を取り、今では大絶賛のリピートだ。ここで切らしたら…もう二度と戻ってこないかもしれない。」

田中工場長
『またその話ですか?
まだその100〜200g、1尾も売れてないじゃないですか?
しかも、部長だって前は市場便を散々バカにしてたでしょ?

それに、いくら冷凍でも、長期間の在庫は品質が落ちます。
今、買い足すのは無理です。まずは今ある在庫を売ってきてください。』

長谷川(静かに呟くように)
『“大海の一滴を埋めよ”…。やっぱり、荷受けや仲買の鮮魚流通に乗せるしかないんですね。
あの組織の販売力と実績は、まさに“大海”です。』

塚口部長
「わかった、わかったよ。じゃあ、早く売ってきてくれ。」

長谷川
『塚口部長、海外向けにバンバン出してる仲買、何人か知ってませんか?紹介していただけますか?試食してもらってOKが出れば、荷受けも動いてくれるかもしれません。食べれば、きっとわかってくれます。』

塚口部長
「…昔、大阪で冷凍煮穴子を持ち込んだ仲買の名刺があったはずだ。当時は相手にもされなかったけど、今回はもしかしたら刺さるかもな。すぐアポ取ってみる。」

児島
「……塚口部長、相当苦労して契約取ったんですね。」

塚口部長
「うるさい。放っとけ。ただな、荷受けと違って仲買は手強いぞ。」

長谷川
『今度は“仲買の壁”…ですね。』

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